新しい趣味を始めたら、自然と、同じ趣味を持つ仲間が周りに集まってきた。やっぱり「類は友を呼ぶ」んだなあ。 街角のカフェ、あの一角だけ、皆、同じようなファッションに身を包んでいる。まさに「類は友を呼ぶ」の光景だ。
そして、現代。YouTubeを開けば、自分が今まさに見たいと思っていた動画が、ずらりと並んでいる。「どうして、私の好みが分かるんだ…?」と、少し不気味に感じることさえある。
この、似た者同士が、自然と引き寄せ合う、という現象を、私たちは『類は友を呼ぶ』と呼びます。かつて、それは、人間社会における、自然な力学でした。しかし、21世紀の今、このことわざは、インターネット全体を支配する、極めて強力な「動作原理」へと進化を遂げたのです。
今回は、このことわざの正体を、情報科学の視点から、私たちのデジタル世界を裏で操る、強力なアルゴリズムを切り口に、クイズ形式で解き明かしていきます。
挑戦状!ことわざ深掘りクイズ
NetflixやAmazon、YouTubeといった、現代のオンラインサービスは、あなたが過去に見た映画や、購入した商品の履歴を、膨大なデータとして蓄積しています。
そして、そのデータを、何億、何十億という、他のユーザーのデータと比較し、あなたと「好みが似ている」人々(=類)を見つけ出します。最後に、その「似ている友人(=友)」たちが好んだもので、あなたがまだ知らない商品を、「あなたへのおすすめ」として、提示します。
このように、「似た者同士は、同じものを好むはずだ」という、「類は友を呼ぶ」の論理に基づいて、ユーザーの好みを予測し、商品を推薦する、この強力なアルゴリズムのことを、何と呼ぶでしょう?
- 暗号化アルゴリズム
- レコメンデーション・アルゴリズム
- 検索アルゴリズム
解答と解説
あなたの「おすすめ」リストを生成する、魔法の正体。見抜くことができましたか? それでは、正解の発表です!
正解は… 2. の『レコメンデーション・アルゴリズム』 でした!
日本語では「推薦アルゴリズム」と呼ばれ、現代のデジタル経済の、まさに心臓部と言える技術です。
なぜ『レコメンデーション・アルゴリズム』が、「類は友を呼ぶ」の正体なのか?
あなた自身を、YouTubeという、広大な宇宙に浮かぶ、一つの「データ点」だと想像してみてください。
- あなたの「類」の特定
あなたは、最近、「70年代のシンセサイザー音楽」の動画や、「ミニマリスト建築」のドキュメンタリー、そして、「モノクロの古いフランス映画」を、よく見ています。 アルゴリズムは、この視聴パターンを分析し、あなたを「ヴィンテージで、ミニマルなものが好きな文化系」という、一つのカテゴリに分類します。あなたの「類」が、特定された瞬間です。 - 「友」を呼ぶ
次に、アルゴリズムは、その広大なユーザーの宇宙をスキャンし、あなたと同じように、シンセサイザーと、ミニマリスト建築と、古いフランス映画を愛する、他の何千、何万人もの人々を探し出します。 彼らは、あなたが一度も会ったことのない、あなたの、デジタル上の「友」です。 - 「友」からの推薦
最後に、アルゴリズムは、その「友人」たちが、最近、熱心に見ていたもので、あなたが、まだ見ていない動画を探します。…ありました。ドイツの「バウハウス」というデザイン学校に関する、ドキュメンタリーです。 アルゴリズムは、非常に高い確率で、「あなたも、きっと、この動画を気に入るはずだ」と予測します。
そして、あなたのYouTubeのトップページに、その動画が、まるで、あなたのために用意されたかのように、表示されるのです。あなたは、それをクリックし、夢中になって見ながら、こう思うでしょう。「どうして、YouTubeは、私の心を見抜いたんだ!?」と。
それは、魔法ではありません。強力なレコメンデーション・アルゴリズムが、「類は友を呼ぶ」という、古代からの知恵を、超巨大なスケールで、実行しただけなのです。
【不正解の選択肢について】
- 1. 暗号化アルゴリズム: これは、データを暗号化し、安全性を高めるためのアルゴリズムです。好みを予測するものではありません。
- 3. 検索アルゴリズム: これは、あなたが、検索窓に、能動的にキーワードを入力した際に、関連性の高い情報を探し出すためのアルゴリズムです。レコメンデーションは、あなたが探す前に、あなたの好みを「先回り」して、提示する点で、異なります。
深掘り豆知識コーナー
- ことわざの由来: この言葉の起源は、古代中国の、占いの書物である『易経(えききょう)』にあるとされています。そこには、「同声相応じ、同気相求む。水は湿(うるお)えるに流れ、火は燥(かわ)けるに就く」という一節があります。「同じ声は、互いに共鳴し合い、同じ気は、互いに求め合う。水が、湿った場所へと流れるように、火が、乾いた場所へと燃え移るように、万物は、その類にしたがって集まるのだ」という、自然の法則を説いたものです。
- 面白雑学: レコメンデーション・アルゴリズムには、大きな危険性も潜んでいます。それが、「フィルターバブル」あるいは「エコーチェンバー」と呼ばれる現象です。アルゴリズムは、あなたが「好きなもの」を見せるのは得意ですが、同時に、あなたの「考え方とは違う、反対意見」を、あなたの目から、巧みに隠してしまいます。その結果、あなたは、自分と同じ意見ばかりが響き渡る、「泡(バブル)」の中に閉じ込められ、自分の考えが、世の中の「常識」であるかのように、錯覚してしまうのです。これは、デジタル時代における、「類は友を呼ぶ」ことの、負の側面であり、現代版の「井の中の蛙」と言えるでしょう。
その「蛙」が、いかにして、外の世界に対する適応能力を失ってしまうのか、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ:明日から使える「知恵」
「類は友を呼ぶ」とは、現代のインターネットを支配する、基本動作原理(OS)となった、古代の知恵です。レコメンデーション・アルゴリズムは、あなたの「類」を特定し、その「類」が好んだ「友(コンテンツ)」を、あなたの元へと、呼び寄せ続けているのです。
つまり、このことわざが本当に教えてくれる、現代的な教訓とは… 『デジタル時代において、あなたは、あなたがクリックしたものの、総体である。アルゴリズムが、あなたの為に「呼んだ友」が、あなたの世界の壁を、形作っていることを、常に意識せよ』ということです。
あなたが、YouTubeやNetflixから、これまで受け取った中で、最も「的確すぎて怖い」と感じた「おすすめ」は何でしたか?
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