彼のYouTubeチャンネルは、最初の1年間、ほとんど誰にも見向きもされなかった。しかし、彼は、毎日、たったの一日も休まずに、動画を投稿し続けた。そして今、彼は、誰もが知る、絶大な影響力を持つトップクリエイターだ。まさに「継続は力なり」だ。
あるいは、走り始めた初日、私は5分で息が上がってしまった。でも、毎日少しずつでも走り続けたら、今では1時間、楽に走れるようになった。「継続」が持つ、その驚くべき力に、自分自身が一番驚いている。
この、「続ける」という、ただそれだけの行為が、やがて、絶大な「力」へと変わっていくという、人生における最も重要な真理の一つ、『継続は力なり』。
これは、単なる精神論なのでしょうか?いいえ。その裏には、この物理宇宙を支配する、極めてシンプルで、しかし、強力な「法則」が働いているのです。今回は、このことわざを、自然科学、特に、力学(りきがく)という視点から、クイズ形式で解き明かしていきます。
挑戦状!ことわざ深掘りクイズ
物理学において、動いている物体は、その動きを続けようとする性質を持っています。そして、その物体の「止めにくさ」の度合いは、その物体の「質量」と「速度」の掛け算で表されます。
例えば、ゆっくりと動く、巨大な貨物列車や、非常に速く飛ぶ、小さな弾丸は、どちらも、止めるのが非常に困難です。このように、物体の運動の状態を表す、この物理学における、基本的な概念を何と呼ぶでしょう?
- エネルギー
- 加速度
- 運動量
解答と解説
あなたの「努力」が、やがて「力」へと変わる、その物理的な正体。見抜くことができましたか? それでは、正解の発表です!
正解は… 3. の『運動量』(うんどうりょう) でした!
英語では “Momentum” と呼ばれ、一度動き出した物事が、いかにその勢いを保ち続けるか、を示す、非常に重要な概念です。
なぜ『運動量』が、「継続は力なり」の正体なのか?
あなたの目の前に、巨大で、非常に重い、鉄製の「はずみ車(フライホイール)」が、静止していると想像してみてください。
- 始めの一歩
あなたは、その重い車輪を、力いっぱい、一度だけ押してみます。しかし、それは、ほんの少し、ピクリと動くだけ。あなたの最初の努力は、ほとんど、無意味に見えるかもしれません。これが、新しい習慣や、挑戦の、初日です。辛く、そして、手応えがありません。そして、多くの人が、この最初の「手応えのなさ」に、心を折られてしまいます。 なぜ、私たちは「三日坊主」になってしまうのか?その心理的なワナの正体は、こちらの記事で詳しく解説しています。

- 継続(けいぞく)
しかし、あなたは、諦めません。次の日も、その次の日も、毎日、同じ方向に、同じ力で、その車輪を、根気強く、押し続けます。 - 力(ちから)なり
あなたの一回一回の「押し」は、ほんの僅かずつ、その車輪の回転速度を、上げていきます。そして、何週間、何ヶ月と、その小さな、しかし、継続的な努力を続けた結果、どうなるでしょう。
巨大な車輪は、今や、轟音を立てて、凄まじい勢いで、回転しています。その『運動量』は、もはや、誰にも止められないほどの、絶大な「力」へと変わっているのです。初日であれば、簡単に止めることができた、小さな障害物など、もはや、その圧倒的な運動量の前では、無力です。
ことわざ「継続は力なり」とは、この物理学における、運動量の法則の、完璧なメタファーなのです。 あなたの「継続」という名の、日々の小さな「押し」が、スキル、習慣、そして、信頼という名の、巨大な「運動量」を、あなたの人生に、蓄積させていくのです。
一度の勉強、一度のトレーニング、一度の親切。それ単体では、世界は、ほとんど変わりません。しかし、その行為が、継続された時、それは、やがて、誰にも止められない、あなただけの、強力な「力」となるのです。
【不正解の選択肢について】
- 1. エネルギー: 運動量と密接に関係しますが、物理学的には、異なる概念です。エネルギーは「仕事をする能力」を指し、運動量は「運動の状態そのものの勢い」を指します。
- 2. 加速度: これは、速度が、どれくらいの割合で「変化」しているか、を示す指標です。あなたが加える「一押しの力」そのものには近いですが、それによって蓄積された「勢い」ではありません。
深掘り豆知識コーナー
- ことわざの由来: この言葉は、実は、古くからのことわざではなく、比較的新しい、近代日本の言葉です。明治から大正時代にかけて、目標達成のための心構えとして、教育や、自己啓発の文脈で、自然発生的に広まったとされています。「勤勉」や「忍耐」といった、近代的な価値観を、力強く、そして、シンプルに表現した言葉と言えるでしょう。
- 面白雑学: この「運動量」の概念は、宇宙旅行において、極めて重要です。真空の宇宙空間では、一度、加速して、ある運動量を得た宇宙船は、他に力が加わらない限り、エンジンを止めても、永遠に、同じ速度で、同じ方向に、進み続けます(慣性の法則)。私たちの「習慣」も、これと似ています。一度、強力な運動量を得た習慣は、それを維持しようとする、強い力が働きます。だからこそ、良い習慣は、一度身につければ、あなたの人生を、力強く押し進めてくれるのです。
まとめ:明日から使える「知恵」
「継続は力なり」とは、物理宇宙を貫く「運動量の法則」そのもののアナロジーです。小さく、地道な、しかし、絶え間ない努力の「継続」が、やがて、スキルや習慣、そして、人生そのものに、誰にも止められない、強大な「運動量」という名の「力」を、与えてくれるのです。
つまり、このことわざが本当に教えてくれるのは… 『今日一日の努力が、あなたを、どれだけ前に進めたかで、その価値を測るな。代わりに、その全ての行動を、あなたの人生という名の、巨大なはずみ車への「一押し」と見なせ。目的は、目先の速度ではなく、絶え間なく、そして、着実に、誰にも止められない「運動量」を、蓄積することなのだ』ということです。
あなたが今、その回転数を、少しずつ上げようとしている、「人生のはずみ車」は何ですか?
この記事では、一つの方向に力を加え続けることで、強大な「運動量」が生まれることを解説しました。では、もし、その力を、二つの方向に分散させてしまったら、どうなるでしょうか? 「二兎を追う」ことの認知科学的な「コスト」について、こちらの記事で探求しています。

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