クイズで挑戦!あなたの計画は「絵に描いた餅」?失敗を招く”脳の罠”の正体とは

「この新規事業の企画書、グラフも綺麗で、予測される利益も莫大。見た目は完璧だ。でも、具体的にどうやって実現するかの現実的な手順が、誰にも分かっていない。これじゃ、まさに絵に描いた餅だ…」 「『3ヶ月で英語をマスターする!』と意気込んで、1日10時間勉強する、超野心的なスケジュールを立てた。でも、初日すらやり切れなかった。典型的な絵に描いた餅だったな…」

私たちはなぜ、こんなにも頻繁に、見た目は立派なのに、全く現実的ではない「計画」を立ててしまうのでしょうか?それは、情熱や意欲が足りないからではありません。実は、私たちの脳に潜む、ある厄介な「思考のバグ」が原因なのです。

今回は、この「美味しそう、でも食べられないお餅」を描いてしまう心のメカニズムを、心理学の視点から、クイズ形式で診断していきます。

挑戦状!ことわざ深掘りクイズ

挑戦状!ことわざ深掘りクイズ

人間には、ある行動の計画を立てる際、それにかかる時間やコスト、リスクを無意識に「過小評価」し、逆にそこで得られる利益を「過大評価」してしまう、という強い傾向があります。

例えば、学生が「このレポートなら、一晩徹夜すれば余裕で終わるだろう」と高を括っていたら、実際には全く終わらなかった、というような状況です。このように、物事がすべてうまくいく楽観的なシナリオばかりを想像し、潜在的な障害や困難を無視してしまう、人間の思考のクセ。私たちの計画が「絵に描いた餅」になってしまう、この最大の原因とも言える認知バイアスを、心理学では何と呼ぶでしょう?

  1. アンカリング効果
  2. 計画錯誤
  3. 認知的不協和

解答と解説

あなたの脳に潜む「計画倒れのワナ」、見抜くことができましたか? それでは、正解の発表です!

正解は… 2. の『計画錯誤』(けいかくさくご) でした!

英語では “Planning Fallacy” と呼ばれ、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンらによって提唱された、非常に有名な認知バイアスです。

なぜ『計画錯誤』が「絵に描いた餅」を生み出すのか?

あなたが、友人の誕生日に、レシピ本で見た、とても豪華で複雑なケーキ(=餅)を焼いてあげようと決心した、と想像してください。その美しい写真を見て、あなたはこう思います。「これなら、今夜2時間もあれば作れるだろう!」と。

まさにその瞬間、あなたの脳内で『計画錯誤』が作動しています。あなたは、自分が手際よく材料を混ぜ、完璧にデコレーションを仕上げる、という「ベストケース・シナリオ」だけを思い描いています。しかし、そこには「途中で卵が足りないことに気づく」「小麦粉を床にぶちまけてしまう」「クリームがうまく固まらない」といった、現実に起こりがちな無数の障害は、一切含まれていません。

『絵に描いた餅』とは、レシピ本に載っている、あの完璧なケーキの写真のことです。それはとても美味しく、自分にも作れそうに見える。しかし、実際にキッチンが戦場と化し、4時間もかかってしまう、というのが現実の「餅つき」です。

「計画錯誤」という脳のバグは、私たちに、この面倒で困難な「餅つき」のプロセスを無視させ、ただただ美しい「絵」だけに見惚れさせてしまうのです。

この厄介なバイアスに対抗し、「絵に描いた餅」を本物の餅に変えるには、どうすればいいのでしょうか?心理学では、計画を可能な限り細かく分解し、起こりうるトラブルを事前にリストアップすること、そして何より、過去に同じような作業をした時に「実際にどれくらいの時間がかかったか」という客観的なデータを参照すること(参照クラス予測)が有効だとされています。

【不正解の選択肢について】

  • 1. アンカリング効果: これは、最初に提示された情報に、その後の判断が強く影響されてしまう、というバイアスです。計画にも影響しますが、「時間の見積もりの甘さ」に特化したバイアスは「計画錯誤」です。
  • 3. 認知的不協和: これは、自分の心の中に矛盾した考えがある時に感じる不快感のことです。計画が失敗した「後」に、「自分は有能なはずなのに、なぜ失敗したんだ」という不協和を感じることはありますが、計画立案の「前」に働くバイアスではありません。

深掘り豆知識コーナー

深掘り豆知識コーナー
  • ことわざの由来: その起源は、中国の歴史物語である『三国志』に由来するという説があります。戦の最中、兵士たちの空腹を紛らわすために、壁に「餅(へい)」の絵を描いて見せたが、もちろん何の役にも立たなかった、という逸話から来ているとされます。
  • 面白雑学: この「計画錯誤」の犠牲となった、巨大プロジェクトの例は世界中にあります。例えば、オーストラリアのシドニー・オペラハウス。当初の計画では、1963年に、700万ドルの予算で完成する予定でした。しかし、実際に完成したのは1973年。かかった費用は、なんと1億200万ドル。当初予算の14倍以上です!最初の計画がいかに壮大で、美しい「絵に描いた餅」であったかが、よく分かりますね。

まとめ:明日から使える「知恵」

「絵に描いた餅」とは、私たちの脳に組み込まれた「計画錯誤」という認知バイアスが生み出す、必然的な帰結です。私たちの脳は、楽観的で、ベストケース・シナリオを好み、面倒な障害を無視するようにできている。だからこそ、意識的にそれに対抗しなければ、いつまでも「食べられない餅」を描き続けることになるのです。

つまり、このことわざが本当に教えてくれるのは… 『素晴らしいアイデアと、実現可能な計画は全くの別物である。自分の楽観主義よりも、厳しい現実の方に、より多くの敬意を払え』ということです。

あなたがこれまで描いた、最も壮大で、そして最も見事に食べられなかった「絵に描いた餅」は何ですか?


この記事では、私たちの脳が持つ「計画錯誤」というバイアスが、いかに非現実的な計画を生み出すかを探りました。

そして、その脆い計画に、最後の一撃を加えるのが、予測不能な「邪魔」です。「藪から棒」ということわざが、私たちの集中を打ち砕き、計画を頓挫させる「割り込み処理」の本質を、情報科学の視点から解き明かします。

この記事では、私たちの脳が、いかに楽観的に計画を立ててしまうか、その「計画錯誤」のメカニズムを探りました。

では、たとえ現実的な計画を立てたとしても、なぜ私たちはそれを「継続」することが、これほどまでに難しいのでしょうか?「三日坊主」ということわざが、私たちの固い決意をいとも簡単に打ち砕いてしまう、もう一つの強力な心理的メカニズムを、行動科学の視点から解き明かします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次