「犬も歩けば棒に当たる」。このことわざを聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
何か行動を起こせば、思わぬ幸運に巡り合うかもしれない。あるいは、でしゃばったせいで、予期せぬ災難に見舞われるかもしれない。良い意味でも悪い意味でも使われる、非常に身近なことわざですよね。
多くの人はこれを「運」や「偶然」の話、あるいは「積極的に行動しよう」という一種の精神論として捉えているかもしれません。
しかし、このことわざを自然科学、特に「確率論」の視点で見ると、全く新しい側面が見えてきます。実は、「犬も歩けば棒に当たる」は、幸運を引き寄せるための極めて科学的なアプローチを示唆しているのです。
今回は、この古いことわざに隠された「幸運の公式」を、確率論の力を借りて解き明かしていきましょう。
突然ですがクイズです!
まずは頭の体操から。このことわざが示す「何か行動すれば、予期せぬ出来事が起こる」という状況を、科学的に説明するのに最も適した学問分野は次のうちどれでしょう?
- 量子力学
- 確率論
- カオス理論
↓ ↓ ↓ ↓
解答と解説
正解は…
2. 確率論
でした!
「え、数学の話?難しそう…」と思った方もご安心ください。ここでは数式は一切使いません。誰でも直感的に理解できるよう、分かりやすく解説していきます。
【記事のポイント】「歩く」=「試行回数」、「棒に当たる」=「事象の発生」
確率論の視点から「犬も歩けば棒に当たる」を分解してみましょう。
- 犬が歩く = 行動する・試す(試行回数)
- 棒に当たる = 何らかの出来事が起こる(事象の発生)
と考えることができます。
例えば、宝くじを買うという行動を考えてみましょう。1枚も買わなければ、当たる確率は当然0%です。しかし、1枚買えば、ごくわずかですが当たる可能性が生まれます。10枚、100枚と買う枚数(試行回数)を増やせば、その分だけ当選という「棒に当たる」確率が上がっていきますよね。
これは宝くじに限りません。
- 新しい趣味を始める → 素敵な友人やパートナーとの出会い(棒に当たる)
- SNSで毎日発信する → 投稿がバズって仕事の依頼が来る(棒に当たる)
- 色々なレストランを開拓する → 一生通いたいと思うほど美味しい店を見つける(棒に当たる)
これら全て、「行動(歩く)」という試行回数を増やした結果、「幸運(棒に当たる)」という事象の発生確率が上がったと説明できます。
もちろん、「棒」は幸運だけでなく「災難」を指すこともあります。もし、あなたが当たった『棒』が不運や失敗だったとしても、心配ありません。そこから何度でも立ち上がるための心の育て方については、こちらの記事が支えになります。

外に出れば交通事故に遭うかもしれませんし、新しいことに挑戦すれば失敗もするでしょう。しかし、重要なのは、何もしなければ幸運も災難も、何も起こる確率がないということです。家でじっとしていれば棒に当たることはありませんが、それは同時に、素晴らしい出会いやチャンスという「ご馳走」にありつく可能性もゼロにしてしまっているのです。
「犬も歩けば棒に当たる」は、単なる精神論ではなく、「行動量を増やせば、良くも悪くも何らかの結果に行き着く確率が高まる」という、確率論に基づいた非常に合理的な法則を示しているのです。
幸運を引き寄せたいのであれば、まずは「歩く」こと、つまり試行回数を増やすこと。それが、科学的に見て最も効果的な「幸運を引き寄せる行動術」と言えるでしょう。とはいえ、その最初の一歩を『歩き出す』のが一番難しい、という方もいるかもしれません。そんな『三日坊主』を克服するための科学的な方法は、こちらの記事で解説しています。

深掘り・豆知識
ことわざの由来と意味の変化
「犬も歩けば棒に当たる」は、もともと江戸時代の『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』という川柳集に登場したのが最初期のものとされています。当時は「犬がうろつき回っていると、人に棒で殴られてしまう」という、もっぱら悪い意味で使われていました。つまり、「余計なことをすると災いに遭う」という戒めだったのです。
しかし、時代が下るにつれて「歩き回っているうちにご馳走にありつけるかもしれない」といった解釈が生まれ、現在のように「思わぬ幸運」という意味でも使われるようになりました。言葉の意味が時代と共に変化していく、面白い例ですね。
確率論の面白い雑学:「誕生日問題」
確率論には、直感に反する面白い問題がたくさんあります。その一つが**「誕生日問題」**です。
「何人集まれば、その中に同じ誕生日のペアがいる確率が50%を超えるか?」
という問題です。直感的には、365日の半分である183人くらい必要だと感じませんか?
しかし、正解は驚くほど少なく、たったの23人です。40人もいれば、その確率は90%近くにまで跳ね上がります。
これは、「誰か」と「誰か」の組み合わせが、人数が増えるごとに爆発的に増えていくためです。これもまた、「試行回数(ここでは人の組み合わせの数)」が増えることで、「事象の発生(同じ誕生日)」の確率が急上昇する一例と言えるでしょう。
まとめ
今回は、「犬も歩けば棒に当たる」ということわざを確率論の視点から解説しました。
この記事のポイントは、「歩く」という行動量(試行回数)を増やすことが、幸運や災難といった予期せぬ結果(事象の発生)を引き寄せる確率を高めるということでした。
これは、ただ闇雲に行動することを推奨する精神論ではありません。確率的な思考に基づき、自らチャンスを掴みに行くための、非常に論理的なアプローチなのです。家に閉じこもっていては、幸運という名の「棒」に当たることは永遠にありません。
今回は、行動量を増やすことが幸運を引き寄せる確率を高める、というお話でした。これは、良いことも悪いことも含めた「何か」が起こる確率です。
では、特定の事象、例えば「達人が失敗する」という出来事の確率は、どのように考えればよいのでしょうか。同じ確率論の視点から、その必然性を解き明かしたこちらの記事も、あわせて読むことで理解がさらに深まります。

あなたにとっての「一歩踏み出す」とは、どんなことでしょうか?ぜひコメントで教えてください。
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