カッとなって送ってしまったLINEのメッセージ。「しまった!」と思った時には、もう相手の画面には「既読」の二文字が…。 「あの時、ああ言えばよかった」「なぜ、あの選択をしてしまったんだ」。ベッドの中で頭を抱え、時間を巻き戻したいと願う夜。誰にでも、そんな経験がありますよね。
この、どうにもならない過去への嘆きこそ、「後悔先に立たず(こうかいさきにたたず)」という言葉が表すものです。
そして、この「転んでしまった」という、動かせない事実を、受け入れ、そこから、再び、立ち上がるためには、まず、折れない心が必要です。 その、力強い「再起力」の秘密を、物理学の視点から、こちらの記事で、解説しています。

しかし、なぜ私たちの世界では、こんなにも絶対的に「やり直し」が効かないのでしょうか?実はその答えは、人生訓や心理学を飛び越えて、宇宙を支配する根本的な法則に隠されていました。
今回はこのことわざを、自然科学、その中でも特に「熱力学(ねつりきがく)」という壮大な視点から、クイズ形式で深掘りします。
挑戦状!ことわざ深掘りクイズ
「後悔先に立たず」、つまり物事が起きてしまった後は元に戻せないという原則は、物理の世界における「時間の流れは一方通行である」という考え方と深く結びついています。
閉ざされた空間において、「乱雑さ(無秩序さ)」は常に増大する方向にしか進まず、この法則が時間の不可逆的な流れを決定づけている、とする物理学の基本法則は何でしょう?
- 万有引力の法則
- 熱力学の第二法則
- 力学の法則(運動の法則)
解答と解説
正解は… 2. の「熱力学の第二法則」 でした!
「物理学の法則が、なぜ後悔の話に?」と思いますよね。これが、驚くほど私たちの日常と繋がっているんです。
身近なたとえ話で解説しましょう。
【物語:割れてしまった生卵】
- 元の状態(行動前): あなたの手には、完璧に整った形の生卵があります。黄身は黄身として、白身は白身として、殻に守られた非常に「秩序だった(ordered)」状態です。これは、あなたが行動を起こす前の「未来を選べる」状態です。
- 行動と結果(後悔の元): あなたはうっかり手を滑らせ、卵を床に落としてしまいました。パリーン!という音と共に、卵は砕け散り、黄身と白身と殻がごちゃ混ぜになった「無秩序な(disordered)」状態になりました。これが、あなたの「やってしまった…」という後悔の対象です。
- 後悔先に立たず(不可逆性): さあ、床に広がった卵を、元の完璧な形の生卵に戻せるでしょうか?絶対に不可能ですよね。
なぜ不可能のか?それこそが「熱力学の第二法則」、別名「エントロピー増大の法則」の力なのです。
この法則は、宇宙全体のエントロピー(乱雑さ・無秩序さの度合い)は、時間が経つにつれて常に増える方向にしか進まない、と定めています。「整った卵(低エントロピー)」が「割れた卵(高エントロピー)」になるのは自然な流れですが、その逆は起こりません。
私たちの「行動」も、この宇宙の法則から逃れられません。送信ボタンを押したLINE、口から出てしまった言葉、選んでしまった選択肢…。それらは全て、宇宙のエントロピーをほんの少しだけ増大させる、不可逆的な「出来事」なのです。
「後悔先に立たず」とは、この宇宙の絶対的なルール「時間の矢は一方通行である」という事実を、私たちの人生に当てはめた、あまりにも的確な表現だった、というわけです。
【不正解の選択肢について】
- 1. 万有引力の法則: これは、リンゴが木から落ちる理由、つまり「質量を持つ物体が引き合う力」を説明する法則です。卵がなぜ床に「落ちたか」は説明できますが、なぜ「元に戻らないか」は説明できません。
- 3. 力学の法則: これは、物の動きを説明する法則です。実は、力学法則だけを見ると、時間の向きはどちらでも成り立ちます(ビデオの逆再生のように)。しかし、現実にはそうなりません。その理由こそが、熱力学の第二法則なのです。
深掘り豆知識コーナー
- ことわざの由来: 明確な出典は不明ですが、鎌倉時代から室町時代の文献には既に見られる、非常に古いことわざです。「やってしまった後で悔やんでも、それを先回りして無かったことにはできない」という、シンプルながらも厳しい人生の真実を、昔の人々も痛感していたのですね。
- 面白雑学:「時間の矢」と「記憶」
なぜ私たちは「過去」を記憶しているのに、「未来」を記憶できないのでしょうか?これも「熱力学の第二法則」が関係している、という説があります。記憶を形成するという脳の活動自体が、エントロピーを増大させる不可逆的なプロセスだから、というのです。つまり、私たちが「後悔」という形で過去を覚えていること自体が、時間の矢が一方向にしか進まないことの証拠でもある、という何とも不思議で壮大な話です。
まとめ:明日から使える「知恵」
「後悔先に立たず」は、単なる精神論ではありませんでした。それは、私たちの宇宙を貫く「エントロピー増大の法則」という、絶対的な物理法則の現れだったのです。
つまり、このことわざが本当に教えてくれるのは、過ぎ去った過去と戦うことの無意味さです。宇宙の法則に逆らって「時間を戻したい」と願うのではなく、そのエネルギーを「今、ここからどうするか」という未来に向けた行動に使うこと。割れた卵を元に戻そうとするのではなく、「さあ、この卵で何を作ろうか」と考えることこそが、最も賢明な選択なのです。
あなたが経験した「後悔先に立たず」な出来事で、今となっては良い教訓になった、というエピソードはありますか?
この記事では、「エントロピー増大の法則」が、なぜ、「時間」が、後戻りできないのか、という、壮大な、謎を、解き明かす鍵であることを、解説しました。では、この、宇宙の、絶対法則は、私たちの、もっと、身近な、日常の、感情にも、関係しているのでしょうか? 実は、あなたが、日々、感じている、「どうしようもなく、忙しい!」という、あの、感覚の正体も、また、エントロピーだったのです。

この記事では、行動の「後」には、もう戻れない、という、宇宙の、非情な法則を、解説しました。では、その、後戻りできない、運命の一線を越える「前」に、私たちの心は、一体、何を、思うのでしょうか? 歴史上、最も、有名な英雄の決断を通して、「案ずるより産むが易し」の、真理に迫った、こちらの記事も、ぜひ、ご覧ください。

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